店舗の経営者であれば誰しも、ひっきりなしにお客さまがやってくるよう商売繁盛を願っているに違いありません。しかし、現実には、お客様が常に入って賑わう店と、そうでない店が存在しています。仮に、立地条件が似ており、同じ商品を取り扱っているにもかかわらず、このように来店客数の違いがあるとすれば、それは、その店舗に顧客誘引力が備わっているかどうかの違いにほかなりません。
店舗の顧客誘引力とは、
通行人が店の存在にふと気付き、どんな商品があるのだろうと興味をもち、
ついつい店に引き込まれ、店内の商品を見て回り、商品を購入してしまう、
というような力を指します。
つまり、
顧客誘引力を高めるためには、
- お店に興味をもたせる機能
- お店に入ってみようという気持ちにさせる機能
- 商品に興味をもたせる機能
- 商品を買ってみたいという気持ちにさせる機能
という、4つの店舗機能をうまく働かせることがポイント
となってくるのです。
そこで、次章では、それぞれの店舗機能を高め、顧客を引きつけるための基本的なポイントをご説明します。
お店に興味をもたせる
■外装・看板
外装は店舗の顔と言われるくらい重要な部分です。顧客にとっては、外装を見た際の第一印象が、その店に入る、入らないという判断基準の一つになります。顧客に店舗の存在や特徴、販売品目を十分にアピールできるように人目につきやすい外装にすることが大切です。
また、その外装を引き立たせるのが看板です。店の雰囲気に合った看板を設置し、顧客に店名をアピールしましょう。
お店に入ってみようという気持ちにさせる
■入りやすさ
店づくりで重要なポイントの一つに店の開口部のつくりがあげられます。どんなによい商品を取り扱っていたとしても、その店が入りにくいつくりや雰囲気をもっていたのでは、顧客は入ってみようという気持ちにはなりません。
したがって、業種・業態や経営コンセプト、店の格式などにもよりますが、一般的には
- 開口部はなるべく大きくとる
- 開口部をガラス張りにする
などの方法で、ある程度店内の様子が分かるようにしておきたいものです。
また、入口は常に整理整頓を心がけ、顧客がスムーズに通行できるように配慮する必要があります。
■入口の設置場所
入口は、店の前を通る人からよく見える位置にショーウインドーを設置し、その手前を入口とするのが望ましいとされています。たとえば、向かって右から左へ向かう人が多い場合は、左にショーウインドーを設置し、その手前を入口とします。ただし、間口が広い店の場合は、通行人がディスプレイされた商品をよく眺めてくれるようにショーウインドーを右に設置し、その先を入口とした方がよいでしょう。
■ショーウインドーのディスプレイ
ショーウインドーがあるような小売業では、通行人の興味を引き、店内に入ってみようという気にさせるため、定期的にディスプレイを変更し、季節感や新鮮味を演出する必要があります。プロのコーディネーターに頼まないまでも、折りを見て新しく装いを変え、売れ筋商品、季節商品、新商品など、自店が顧客に対してアピールしたい商品をセンスよく見せるように心掛けましょう。
商品に興味をもたせる
商品に興味をもってもらうためには、まず、気に入った商品が見つかるまで顧客にじっくりと店内を見てもらうことが大切です。
■店内配置
顧客が店内を隅々まで自由に回遊できる配置になっているか、通路幅は狭すぎないか、といったことをもう一度、基本に立ち返って確認してみましょう。ただし、これらは取扱商品や業種によって求められる要素が異なりますので、それぞれの特性にあったレイアウトを考える必要があります。
一般には、
- 高級品を取り扱う店舗は、通路や回遊スペースを多くとり壁面に商品を展示して「広い空間」を演出する
- 日常生活必需品を取り扱う店舗は、通路は「狭すぎず・広すぎず」にして什器を多用して商品を多く陳列できるようにする
ことがポイントです。
また、コーナーや奥正面のスペースを有効に活用した商品の効果的な演出も忘れないようにしましょう。
■商品の品揃え
商品構成は充実しているでしょうか。また、陳列商品の量は適切でしょうか。商品の種類が少なく、陳列量も少ない場合、実際の購入に結び付かないこともあります。納得して購入してもらうために必要なだけの商品構成の充実は大切なポイントです。
■商品陳列
同じ商品でも陳列の方法によって、顧客に訴えかける力が変わってきます。
- 商品の魅力を十分に表現できる陳列
- 商品が見やすい陳列
- 商品を生かす陳列器具の使用
といったことを念頭に置き、かつ顧客が実際に商品をさわって確かめることのできる配置を考えましょう。
■店舗照明
小売店にとって、照明は商品の見せ方を決める重要な要素であり、顧客の心理にも大きな影響を与えるものです。そこで、
- 商品をよりよく見せるための直接照明
- 店舗全体の雰囲気づくりをする間接照明
をうまく使った全体のバランスを考えた演出が重要となります。
商品を買ってみたいという気持ちにさせる
最終的に気に入った商品を「買う」という気持ちにさせる要素には、商品自体の訴求力のほかにも間接的な要素がいくつか考えられます。
■売り場の訴求力
ディスプレイなどにより、顧客に対して商品をより魅力的に表現し、購入意欲を促進します。とくに、「いいものがあれば購入したい」といった、購入意欲がそれほど高くない顧客に対して有効な力を発揮します。
■売り場色彩
売り場では、販売促進を目的とした色合いが重要な意味をもちます。
- 商品をグレードアップさせるような色遣い
- 天井、壁面、床、売り場の什器、商品などの色彩の調和
などを考えて、色彩の働きを有効に売り場に取り入れましょう。
■BGM(音楽)
店内に流れる音楽も雰囲気づくりのうえでは重要な意味をもちます。
音楽選定のポイントとしては、
- 顧客層や商品のイメージに見合ったものを選ぶ
高級婦人服であるならムードのあるシャンソンミュージック
若者向けの店舗ならアップテンポのロックミュージック - 時期や気温などを考える
クリスマスソング
暖かい時期にはアップテンポの音楽
寒い時期には落ちついた感じの音楽
といったことがあげられます。
■接客マナー
店舗の外観やレイアウト、陳列など以外でもっとも顧客に心理的な影響を与えるのが接客サービスです。接客サービスは小売業などにおいては、
- 積極的すぎる接客では、来店客にとっては<心理的な圧迫>となり、入店を妨げることになりかねない
- かといって中途半端な接客では<サービスの悪化>となる
という面で難しい部分もありますが、お店の打ち出したいイメージによりそのポイントは変わります。たとえば
- 高級品取扱店においては来店客にじっくりと自由に商品をみてもらって、来店客から<サイン>が出るまで声をかけない
- 生活必需品取扱店においてはできるだけ<活気>を出して、明るく<忙しい>振る舞いをする
ことも一般的なポイントとしてあげられます。