最近は”コト”消費といわれる新しいトレンドが注目されています。従来は、商品の所有自体が消費の主な目的でしたが、ただモノを手に入れるだけでは飽き足らなくなった消費者層は、買い物時の娯楽性や体験性といったプラスアルファの価値を求めるようになってきました。こうした傾向が、”モノ”消費に対する”コト”消費という言葉で表されます。商品の品質が向上し、商品間の差異が少なくなったことに加え、一時のデフレの進行により、消費者は一定の品質の商品をいつでも低価格で入手できるようになって物質的に充足してしまった中で、コト消費喚起のための演出は、差別化の方策として有効と思われます。
小売店がコト商品の喚起を仕掛けるにはいくつかの方法がありますが、一つは、商品と一緒にさまざまな情報を提供するやり方があります。たとえば、生産者の苦労や利用者の声を店頭に掲載し、商品へのイメージを膨らませて消費を促す方法です。
また、購入時の楽しさや快適さを演出する方法もあります。絵画ギャラリーなどを併設して娯楽性を高め、来店客がコトを楽しみながらモノを買う仕掛けを作っている店舗が人気です。
さらに、顧客との関係を深めて顧客ごとの嗜好や傾向を把握し、個別の要望に対応する方法もあります。過去の購入履歴を分析し、顧客の好みに合った商品を提案したりするのがこれに当たります。
たとえば、トヨタの「レクサス」は開発思想などを情報発信して特別な車であることをアピールする「情報提供」、専門のショールームでサービスを提供する「快適さの演出」、レストランの紹介予約などのコンシェルジュサービスを提供する「個別の要望への対応」など、多くの仕掛けを備えています。
こうした取り組みには工夫と手間が必要で、短期的にはコストアップ要因となりますが、長期的には固定客の取り込みにつながりますので、戦略の一つとして検討してはいかがでしょうか。ぜひとも、消費者に「なぜかこのお店で買ってしまう」と感じさせる魅力的な店作りを実現してください。
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